ツーリング(北上編)
昔話です。
十数年前のゴールデンウィークのこと。
あまりにヒマだったので、バイクで旅に出ることにした。
大学時代から仲の良い友人と二人旅。
その頃、ワタクシはすでにバイクを手放していたんだけど、
友人が会社の後輩を脅して、250ccのバイクを借りてきてくれた。
私: 「どこに行く?」
友: 「俺んち、行こうぜ」
私: 「お前んちって札幌じゃん。行けんのか?」
友: 「大丈夫、大丈夫。
明日の夜、ダチが集まってススキノで飲むって言ってたから
それまでに着くように行こうぜ」
あまりに軽く言うので、東北人ながら北海道未経験のワタクシは
その案に簡単にのったわけ。
GWの夜11時頃、東北自動車道に乗るべく、千葉県を出発。
都内に入った途端、首都高は大渋滞。
GWってこんなに出かける人、多いのか。
何とか東北道に乗って、深夜の高速をひた走る。
夜中だし、北に向かっているから当たり前なんだけど、
だんだん気温が落ちてきて、寒くなってきた。
東北に入る頃には、かなりブルブル状態。
サービスエリアごとにレストランに入って
暖をとらないととてもじゃないけど走れない。
GWってこんなに寒かったっけ?
それでも2台のバイクは、北を目指して走り続ける。
ワタクシが借りたバイクはいわゆるネイキッド。
カウリング(風除け)も何も無い、もろに風を受けるタイプ。
友人のバイクはフルカウルのツーリング仕様。
ずるいよお前。
寒い、寒い、寒い・・・
福島県に入り、福島IC付近で提案した。
私: 「ここ降りれば10分でオレの実家だ。
予定変更して、俺んちに行こうぜ」
友: 「やだよ。夜、飲み会行くって言っちゃったもん」
ここで降りれば、30分後には暖かい布団に入れるのに・・・
しかたない、また北へ向かって走り出します。
時刻は明け方の4時過ぎ。
そしてさらに寒くなる。
青森あたりで夜が明けてきた。
横を見れば、「桜まつり」だって。
おいおい、今頃桜って・・・そんなに寒いのか?
ふと、高速道路の気温表示を見たら「4℃」。
青森、まだ冬じゃん。
死にそうになりながら、何とか東北道を完走。
青函フェリー乗り場に着いた。
バイクをフェリーに積み込み、客室へ。
久し振りに横になれた。
ああ、天国。
ずっとこのままなら良いのに。
そんな思いとは裏腹に函館に着岸。
フェリーで休んだのと、初の北海道上陸で少し元気になる。
時刻は午後4時くらいだったか。
やっぱり北海道は味噌ラーメンでしょうと、ラーメン屋に入る。
店のオヤジが話しかけてくる。
オ: 「どっから来たの?」
私達: 「千葉です」
オ: 「そう、函館の夜景は良いよ。ゆっくりしていきな」
私達: 「いや、ボクたちこれから札幌に行くんで」
オ: 「えっ?!今からかい?」
私達: 「ハイ!夜、仲間との飲み会もあるんで」
オ: 「・・・そう、気をつけて行きな」
北海道初上陸のワタクシには、
オジサンの反応の意味が分からなかった。
時刻は夕方の6時。
バイクにまたがり、ふと道路標識を見上げた。
”札幌 350km”
おいおい、350kmって、千葉から福島より遠いぞ!
これ、本当に着くのか?
と、言う間もなく、走り出す友人。
仕方が無いので、ワタクシも着いていく。
当時はまだ高速道路も整備されておらず、
室蘭方面に向けて夜の一般道をひた走る。
田舎の一般道は、轍がひどくてすごく怖い。
で、寒い。
速く行きたいけど、スピードを出すと風が寒い。
止まるのはガソリン補給と、コンビニで携帯カイロを買うためだけ。
体のあちこちに携帯カイロを入れるも、いっこうに効果なし。
ついに、新たな提案をした。
私: 「なあ、あそこに洞爺って駅がある。駅で暖まろう。
で、駅に泊めてもらおうぜ。もう耐えられん」
友: 「だってお前、飲み会が・・・」
私: 「ここで死んでもいいのか?!(大げさ)
多分、こんなふうに泊まるヤツはたくさんいるよ」
ワタクシの迫力というか懇願に負けて、駅に入った。
しばらく温まって、このまま寝ちゃえと思ったら、駅員さん。
「はいはい、閉めるよ。出て、出て!」
どうやら、そういうライダーはいないようです。
追い出されたワタクシたち、もう前に進むしかない。
室蘭あたりから、ようやく道央道(高速道路)に乗った。
すでに時間は夜中1時。
高速道路の気温表示を見たら、「-3℃」。
死ぬかもしれん・・・
何とかかんとか札幌にたどり着いたのが、夜中の2時過ぎ。
飲み会なんてとっく終わってた。
私: 「お前、27時間もかかったぞ!
札幌近いようなこと言ってたじゃねぇかよ!
ホントにノンストップで自走して帰ったことあんのか?」
友: 「どうだったけなぁ。もしかすると途中で一泊したかな?」
・・・騙されました。
次の朝、速攻で苫小牧からの帰りのフェリーを予約しました。
数日間の滞在中は、北の食材などを堪能し、
それなりに楽しんで、とうとう帰る日がやってきた。
苫小牧のフェリー乗り場で、バイクにまたがり乗船を待つワタクシたち。
そこにおまわりさんがやってきた。
警: 「どうだった?北海道は」
私: 「楽しかったです」
警: 「そうか、よかったなぁ」
私: 「でも、寒かったっす」
警: 「そうだろう。地元の人間もまだバクなんて乗らねぇえぞ」
私: 「・・・・(友人のほうを見るワタクシ)」
そっぽ向いて聞こえない振りしてました。
やっぱり騙されたのね。
コイツの軽いノリに二度と乗っちゃイカンと思った旅でした。
と、言いながら、「四国編」もあるのだが。