垣根の無い人たち
朝、オフィスのエレベーターを待っていたら、
見知らぬ男性に話しかけられた。
「○○○にお住まいですよね?」
「あ、ハイ(誰?この人)」
「私もF棟なんですよ。この前、見かけたんで。何棟ですか?」
「そうなんですか。私、C棟です。(誰?)」
「毎朝、休まず続きますね。やっぱり朝の運動は気持ちいいですよね」
朝、スポーツクラブで会う人らしい。
毎朝、だいたい同じメンツなので、顔を覚えたらしい。
ワタクシ、あまり人付き合いが上手なほうではない。
野球もやってるし、サラリーマンもしてるから
致命的に人付き合いがダメなわけではないのだろうが、
そこらじゅうに自分から積極的に話しかけたり、
仲間づくりをしようとすることはあまり無い。
ましてやスポーツクラブなんて、トレーニングという
目的があって行くわけで、他人のことを気にしたりはしない。
休まず毎朝通っても、ほとんど知り合いが出来ないのは
そんなに不思議なことではないと思うのだ。
そんなわけで、その男性のこともまったく記憶に無かったが、
きっとこれから毎朝会うだろうから、頑張って顔を覚えた。
しかし、自宅近所とか別のシチュエーションで会ったら、
まず気づかないと思われる。
もちろん、「今度飲みに行きましょう」とか、
「飯でもどうですか?」とはならないだろう。
あまり良く知らない人に垣根無く話し掛けたり、
誘ったり出来るひとってスゴイと思う。
羨ましいとか、そうなりたいとは思わないが、
やっぱりひとつの才能だと思う。
ワタクシには無理だ。
さて、先週の休日。
いつもに増して早起き。
あれやこれやを高速ダッシュで片付けて釣り場へ。
ルアーでシーバス(スズキ)を狙うのだ。
いつもの堤防に行くと、いつものオジサンがいる。(写真右端)
このオジサン、ここに住んでるんじゃないかと思うくらい、
必ずここで釣りをしている。
この堤防に釣りに来ていなかったことはまだ無いと思う。
ワタクシたちはシーバス専用のそれなりの竿で釣るのだが、
オジサンは、どうみても安物の投げ釣り用の竿でルアーをぶん投げる。
そして、ワタクシたちよりたくさん釣り上げるのだ。
釣りは道具じゃないらしい。
で、とても親切であれこれ教えてくれる。
「対岸に見える2本の煙突の方向に向かって投げてみな。
あそこの底には幅25mくらいの沈み岩があっからよ、
アイツラ(スズキ)、そこにくっついてんだよ」
「あっちの鉄塔見えっか?
あの下はよ、ずっと海底がえぐれてっからよ、
そこから沸いて出てくっから。ほら、ここから投げてみな」
まるで見てきたようなことを言う。
実際、オジサンの言うとおりにすれば釣れるらしい。
もしかしたら、海底に住んでるのか?(なわけない)
この日、オジサンはすでに2本揚げていた。
「今日はダメだな。トリヤマができねえしな。
小魚が入ってきて、鳥が集まってこねぇとな」
確かに、投げても投げても、釣れるのは海草ばかり。
オジサンの言うとおりだった。
もしかして、もと漁師とか?
まあ、静かな海に向かい合うだけでも良い気分転換だ。(負け惜しみ)
このオジサンも垣根の無い人たちの部類だ。
何度も会って色々教わっているのに、
まだ名前もしらないのだけど。