ラケットの思い出
Ken'sでは、ラケットキャンペーン中なので、ラケットの話でも。
ワタクシがはじめて買ったラケットは、ドネー製の怪しいモデル。
時代はボルグ全盛の幕開けあたりで、
ドネーのラケットがブレイクする直前。
高校一年生、テニス部(正確にはテニス愛好会)に入部したワタクシは、
ラケットが欲しくてたまらない。
しかしその頃のテニス部の掟は、先輩がなじみのテニスショップに
新入生を連れて行って、「お前はこれ!」「お前はこっちだ!」と
何の根拠も無く、ラケットをあてがっていくというもの。
なんでか知らないけど、勝手にラケットを買ってはいけなかったみたい。
ところが、思い立ったらすぐに行動しないと気が済まないこの性格。
先輩がショップに連れて行ってくれるまでは、とても待てない。
元来、形から入るタイプなので、テニス部に入部したからには、
とにかく一刻も早くラケットを手に入れたくてしょうがない。
そんなわけで、一緒に入部した親友と連れ立って、
街のスポーツ店へ。
なんせテニスをしたことが無いから、テニスショップなる店が
どこにあるのかも分からない。
そんなわけで、テニスショップじゃなくて、スポーツ店に入った。
野球用品やサッカー用品に混じって、一応、ラケットも揃っているけど、
いったい何を選べば良いか、まったく分からない。
店員さんに「テニスを始めるんだけど、ラケット買いに来た」と聞けば、
「これが良いんじゃない」と、1本のラケットを選んでくれた。
見れば、赤と黒の精悍な感じのするラケット。
フレームサイドには「Made in Belguin」とか書いてある。
しかも、ガットも最初から張ってあるし。
「おお!スゲェ!外国製だよ」
バカな私たちはそのまま購入。
次の日、喜び勇んで練習に行った。
先輩がワタクシたちのラケットを見て、一瞬固まった。
「お前ら、これどうしたんだ?」
「はい!昨日買って来ました!」
「・・・こんなラケット見たこと無いぞ。どこで買ったんだ?」
「オス!○○スポーツ店です!」
「アホ!あそこはほとんど野球専門だ!
余ってる在庫ラケット買わされたな。
スゲエ重たいし、グリップ5ってお前ら・・・」
「え?ガットも張ってあるからお徳かと・・・」
「もういいわ・・・まあ、好きにしろ」
ドネーのライセンスものの「インターセプター」とかいう、
量販モデルのとんでもない代物だったみたい。
買っちゃったものは仕方が無い。
周りの新入生がフタバヤとかカワサキ製のオーソドクスなラケットを使うなか、
変な色のラケットで変に目立ちながら練習を続けるワタクシたち。
しかも、グリップサイズ5・ウエイト450グラム。
さすがに使いづらくなって、親に懇願してフタバヤの
ゴールデンショットを買いました。
そりゃあもう、うれしくてうれしくて、
また、喜び勇んで練習に行くと、
先輩が、
「おっ?ラケット買ったのか?」
「はいっ!今度はゴールデンショットです!」
「そうか、ちょっと貸してみろ」
「オス!」
自分が打つより先に先輩が使い始めた。
その頃、テニス部では、後輩がラケットを買ってくると
まず先輩が試し打ちをするという、変なしきたりがあった。
良く分からないけど、その頃の体育会なので理不尽が普通の世界。
なかなか自分にラケットが戻って来ない。
まあ、どっちにしても最後まで球拾いなので、
ラケットが戻ってきても、打てやしないのだが。
それでも、暗くなりかけた最後の最後で
ボールを打たせてもらえるのを楽しみに待っていた。
そして、先輩の練習の仕上げ、スマッシュ。
「ラストで~す!」
声を掛けたら、最後の一球を思い切りスマッシュする先輩。
そのとき、聞いたことの無い妙な音がした。
パキッ!
先輩の手には、見事にふたつに折れ曲がったマイラケット。
呆然とするワタクシに、「今度は折れないの買えよ」と
ラケットを返し、去っていく先輩。
ああ、思い出しただけで涙が・・・
今だったら、確実に殴ってるな。
ということで、買ったは良いけど、一度も使うことの無かったラケット、
それは、フタバヤ ゴールデンショット。
名品・・・だそうです。(知らない)
なんつう思い出だ。